2013-01-01から1年間の記事一覧

ゆくとし、くるとし、呉彦祖 ハァイ、みんなグッイブニーン! 今年ももうすぐ終わりだねー。みんな年の瀬は実家に戻ったりするのかな? それとも家から一歩も出ずにひとりでまったりかな? 浴びるほど酒を飲んで、浴びるほどDVDを観てってカンジ? それもい…

凍てついた空気のなかに、時折やわらくとけた陽のぬくもりを感じる冬の終わりのことだった。いつものように背中をまるめてトールケースをなでながらばあちゃんは言った。「ダニエル・ウーはなんのために上り詰めると思う?」 答える代わりにぼくはばあちゃん…

ダニエル・ウーを知って、ぼくはほんのすこしだけ大人になった気がする。 大人は「大人になった」なんて、いちいち思ったりしないだろうから「大人になった」なんて言ってるぼくは、やっぱりまだまだこどもなんだろうけど、ダニエル・ウーが演じるキャラクタ…

甄子丹教の話をしよう。 略して丹教ともいう。ぼくが知ってる丹教の人間はひとりだけ。ばあちゃんではない。ばあちゃんは甄子丹を語らない。理由は「彼を語る言葉を持たないから」 甄子丹。イェン・チータン。ドニー・イェンとも呼ばれる、その俳優はばあち…

むかしむかしのはなしだ。 ばあちゃんとはぐれて迷子になっていたぼくを助けてくれたひとがいた。知らない男のひとだった。顔は思い出せない。けれど、握っていた手の感触は覚えている。ごつごつとした、おおきな手だった。 何度も来たことのあるデパートな…

一晩経ってもまだ、まぶたの奥にサムの姿が残っている。 父親の涙を見た瞬間、サムは世界の終わりを感じたのだろう。サムの心からは血が噴き出していた。ぼくの目から見たらサムの行為は裏切りだ。だけど彼にとって、彼の決意は「裏切りは無かった」と、彼の…

ばあちゃんは言った。「この世には二種類のダニエル・ウーがいるんだよ」「良いダニエル・ウーと悪いダニエル・ウー?」 ぼくの答えに、ばあちゃんは「ち、ち」と舌を鳴らし、首を振った。「死ぬダニエル・ウーと死なないダニエル・ウーさ」 デッキの上に重ねてあ…

「ねえ、ぼくちゃん。ぼくちゃんは、不憫な子が好きなのかい」 ぼくがこくりと頷くと、ばあちゃんは「そうかい、そうかい」と呟きながら、なにかを考え込むような素振りをみせた。「なら、ぼくちゃんは、ダニエル・ウーを知らないといけないねえ」 首を傾げる…